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メーカー | CASIO |
型名 | FC-200V | |
種別 | 金融電卓 | |
発売開始 |
2004年7月21日(日本)
MoHPC の このスレッド で"FC-200V"という単語が最初に出てくるのが 16 Sept 2004 なので、欧米でも数ヶ月後に発売されたと思われる。 |
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製造終了 | - | |
寸法 |
奥行 161mm × 幅 80mm × 厚さ 12.2mm(公表値)
奥行 161mm × 幅 79.5mm × 厚さ 約14mm(実測値。厚さに突起物含む) 奥行 162.5mm × 幅 84mm × 厚さ 約18.5mm(保護ケース背面装着時の実測値) |
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重量 |
105g(公表値)
102g(電池を含む実測値) 140g(電池とハードケースを含む実測値) |
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入力方式 | ライン表示方式 | |
画面 | 青色液晶 フルドットマトリクス96×31画素+状態インジケーター17個 | |
CPU |
沖電気工業
ML610901
(8bit, 500kHz)
※クロック周波数は低いが、3段パイプラインを有しているので、パイプラインなしCPUの1.5MHz相当 |
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RAM | 3584 bytes | |
ROM/Flash | ROM 96 Kbytes 以上(外部メモリによってさらに増設されている可能性あり) | |
電源 | LR44 × 1 +太陽電池 | |
プログラミング言語 | なし | |
公式ページ | FC-200V | 金融電卓 | 電卓 | CASIO | |
説明書URL |
FC-200V 取扱説明書ダウンロード(日本語)
FC-200V/FC-100V Manual(英語) |
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著者の購入年 | 2018年2月15日 | |
著者の購入価格(購入店) | 電卓$23.52 + 送料$17.61 = $41.13(Amazon USA) |
本機 FC-200V は、金融電卓にしては表示能力が高いことが特徴です(2018年2月現在)。
フルドットマトリクス液晶で4行表示が可能です。
日本で主に売られている金融電卓は、
CASIO BF-480
のような簡単操作を売りにしたものが主流です。
しかし、本機 FC-200V は
HP 12c Platinum
や
BA II Plus
のように金融の知識がないと使いこなせない本格的なものです。
そのため、主に欧米市場を狙った金融電卓と思われます。
本機 FC-200V は日本でも販売されていますが、9,000円程度の高額で売られています(2018年2月25日現在、ヨドバシ.comで¥9,170(税込))。
カシオは日本で普及させる気はないようです。
ちなみに日本版 FC-200V は「日本語操作シート」をモード切替キーに貼り付けるようになっています。
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![]() |
USA版 | 日本版 |
このことからも欧米向け製品であることが伺えます。
しかし、FC-200V を
CFA協会認定証券アナリスト試験
に持ち込むことはできません(
CFA Institute : Calculator Policy
)。
このレビューは USA版 FC-200V と「FC-200V取扱説明書」(RCA501361-001V02)に基いています。
フルドットマトリクスの液晶表示(96×31画素)による4行×16文字の表示は本機最大の特徴と言えます。
他社の金融電卓の表示装置は貧弱なものが多いのです(2018年2月現在)。
機種名 | 表示装置 |
---|---|
HP 12c | 白黒液晶:7セグメント1行×10桁 |
HP 12c Platinum | 白黒液晶:7セグメント1行×10桁 |
HP 10bII+ | 白黒液晶:7セグメント1行×12桁 |
HP 17bII+ |
白黒液晶:フルドットマトリクス(131×16画素)2行×22文字(最大)
(通常は1行×22文字の下に常時メニューが表示される。 しかし、メモリ残量表示などをすると2行表示になる) |
BA II Plus | 白黒液晶:ドットマトリクス1行×3文字+7セグメント1行×10桁 |
BA II Plus Professional | 白黒液晶:ドットマトリクス1行×3文字+7セグメント1行×10桁 |
ほとんどの金融電卓は未だに7セグメントを使っています。
BA II Plus シリーズでも補助的にドットマトリクスで3文字表示できるだけで基本的には7セグメントです。
本機に近い表示能力を持っているのは、HP 17bII+だけのようです。
しかし、FC-200V の4行×16文字=64文字に対して、HP 17bII+ は2行×22文字=44文字です。
FC-200V の表示文字数は、HP 17bII+ より1.45倍も多いのです。
本機 FC-200V はモードボタンが整然と並んでおり、機能の切替が容易になっています。
以下に各種モードを示します。
モード名 | 意味(英語) | 意味(日本語) |
---|---|---|
SMPL | Simple Interest | 単利計算 |
CMPD | Compound Interest | 複利計算 |
CASH | Cash Flow | 投資評価(キャッシュフロー) |
AMRT | Amortization | 償還計算(償却計算)※ |
COMP | Compute | 四則演算・関数モード |
STAT | Statistics | 統計計算 |
CNVR | Conversion | 金利変換 |
COST | Cost/Sell/Margin | 原価、販売価格、粗利計算 |
DAYS | Days Calculation | 日数計算 |
DEPR | Depreciation | 減価償却 |
BOND | Bond | 債券計算 |
BEVN | Break-Even point | 損益分岐点関連計算(6つサブモードに分かれる) |
さらにBEVNモードは内部で以下の6つのサブモードに分かれます。
モード名 | 意味(英語) | 意味(日本語) |
---|---|---|
BEV | Break-Even Point Calculation | 損益分岐点計算 |
MOS | Margin Of Safety | 安全率計算(安全余裕率、経営安全率) |
DOL | Degree of Operating Leverage | 経営レバレッジ係数計算 |
DFL | Degree of Financial Leverage | 金融レバレッジ係数計算 |
DCL | Degree of Combined Leverage | 複合レバレッジ係数計算 |
QTY CONV. | Quantity Conversion | 数量および関連数値計算 |
以上のように今までに紹介した BA II Plus や HP 12c Platinum よりも多機能です(HP 17bII+に関してはよく分からない)。
本機 FC-200V は電源ON時に必ずCOMPモードで起動します。それなのに[COMP]キーの配置は目立たない位置になっています。
他機種では本機のCOMPモードに相当する機能を中心に位置付けることが多いのですが、本機 FC-200V はCOMPモードを中心にしたいのかどうか不明確な感じがします。
本機 FC-200V は金融電卓としては強力な画面と豊富な機能を持っています(2018年2月現在)。
しかし、メモリーに関しては繁雑で使いやすいとは言えません。
以下にメモリーの一覧を示します。
メモリー種別 | メモリー数 | メモリー名 | 説明 |
---|---|---|---|
金融計算メモリー(VARS) | 10 |
n, I%, PV, PMT, FV,
P/Y, C/Y, PM1, PM2, Dys |
全モードで共用する
最重要メモリー
。
各モードがお互いに上書きできるので注意が必要。 |
金融計算メモリー(VARS)
日付専用 |
2 | d1,d2 |
日付しか格納できない。
BONDモードとDAYSモードで共用する。 |
金融計算メモリー(VARS)
一時記憶用 |
25 |
COSTモード:CST, SEL, MRG
DEPRモード:j, YR1 BONDモード: CPN, RDV, PRC, YLD BEVNモード: DCL, DFL, DOL, EIT, FC, ITR, MOS, PRC, PRF, QBE, QTY, r%, SAL, SBE, VC, VCU |
金融計算の設定値や結果を一時的に記憶。
モード切替や電源OFFで簡単に消えてしまう。 |
投資評価(CASH)モードの
D.Editorのデータ |
80 |
CF
0
〜CF
79
(実際にはX列の1〜80 と表示される) |
キャッシュフローのデータ。HP 12c シリーズや BA II Plus と違って各データを繰返す機能はない。
STATエディタのデータと同じ記憶領域を共用している。 |
STATエディタのデータ | 26組/40組/80 |
X列の1〜80
Y列の1〜40 FREQ列の1〜40 |
統計データ。以下のように設定によってデータ数が変わる。
1変数(FREQ無):80データ 1変数(FREQ有):40組 2変数(FREQ無):40組 2変数(FREQ有):26組 ※FREQ(Frequency)は頻度の意 投資評価(CASH)モードのD.Editorのデータと同じ記憶領域を共用している。 |
カスタムショートカット | 2 | SHORTCUT 1,2 | 各種計算モードの状態(入力した値を含む)、セットアップ情報、値や数式を登録できる。 |
関数ショートカット | 2 | FMEM 1,2 | 関数を登録できる。一覧表から関数を探して入力するのをある程度避けることができる。 |
アンサーメモリー | 1 | Ans | 最後に計算した結果を保存するメモリー。関数電卓のそれと同様。 |
独立メモリー | 1 | M | 一般電卓(実務電卓)のメモリーに似た用途のメモリー。加減算に向いている。 |
変数メモリー | 6 | A, B, C, D, X, Y | 任意の用途に使える。しかし、座標変換時にX,Yメモリーが更新されることに注意。 |
以上のようにかなり繁雑なメモリー構成になっています。
モード切替だけで消えてしまうメモリーとモード間で共用しているメモリーが多いのが難点です。
金融計算メモリー(VARS)が3種類もあるのが煩雑さに拍車をかけています。
日本語説明書の説明も酷いものです。最初はVARSが10メモリーしかないと書いておきながら後から増えていくのです。
統計データとキャッシュフローデータが同じ記憶領域を共用しているのも使用時に注意が必要です。
統計データを入力すると、キャッシュフローデータは消えます。その逆も同様です。
メモリーに関してはテキサス・インスツルメンツ社の
BA II Plus
の方が使いやすいと思います。
BA II Plus はメモリーの共用を徹底的に避けています。
複数のワークシート(本機のモードに相当)に同名の変数(本機のメモリーに相当)があっても記憶領域は別々にしています。
メモリーが勝手に消えることもありません。
上表の最初の行に書かれている最重要の金融計算メモリーだけを以下に示します。
モードによって意味が変わることもある
ので、おおよその意味だと思って下さい。
以下の10種類のメモリーが本機 FC-200V の中心的な役目を担っています。
メモリー名 | 元になった英語 | 意味 |
---|---|---|
n | Number of Term | 期間の回数/支払回数/受取回数 |
I% | Interest rate [%] | 年利[%] |
PV | Present value | 現在価値 |
PMT | Payment | 支払金額/受取金額 |
FV | Future value | 将来価値 |
P/Y | Payments per Year | 年間の支払回数/受取回数 |
C/Y | Compoundings per Year | 年間の利息回数(年間の複利期間の回数) |
PM1 | Payment 1 ? | PM1 回目の支払い |
PM2 | Payment 2 ? | PM2 回目の支払い |
Dys | Number of Days | 期間(日数) |
これらのメモリーは各モードで共用されるので、各モードがお互いに上書きをすることに注意しましょう。
テキサス・インスツルメンツ社の BA II Plus は金融計算の結果を必ず変数に格納します。 金融計算の結果の種類と同じ数の変数が用意されているのです。
一方、本機 FC-200V は金融計算の結果の扱いが金融計算の結果の種類によって異なります。
FC-200V の金融計算の結果の扱い方は以下の3つに分かれます。
メモリーが繁雑なので、金融計算の結果の扱いも繁雑になっています。
前述のようにモードの切替は非常に容易です。モード選択キーを押すだけです。
メモリーの扱いが繁雑なのはすでに説明しています。
ここでは金融計算関連モードの操作性について説明します。
COMPモード(四則演算・関数)やSTATモード(統計)は操作性が異なるので後述します。
金融計算関連のモードに切替えると、そのモードで設定するべき項目が4行表示によって一覧表示されます。
4行に収まらない項目はカーソルキーで画面をスクロールさせて表示する必要があります。
そのため、操作方法は比較的分かりやすくなっています。
BEVNモード(損益分岐点関連計算)の場合、メニューが表示されてさらに計算の種類を選ぶ必要がありますが、その後は同様に項目が一覧表示されます。
例えば、単利計算(SMPLモード)の画面表示を見てみましょう。
最初のSetは1年を365日なのか360日にするのか選ぶだけです(金融計算において1年=360日にすることが多い)。
Dysは単利計算をする日数です。I%は年利です。PVは元金です。
カーソルキーでこれらの項目を選択して、設定を変えたり、数値を入力するだけで準備は完了です。
前述の単利計算の計算をするために単利計算(SMPLモード)の画面を下にスクロールします。
:Solve と表示されている項目を選択して[SOLVE]キーを押せば計算結果が表示されます。
例えば、単利の利息を求めるために SI:Solve(SI=Simple Interest)を選択して[SOLVE]キーを押します。
このように計算結果が表示されます。
この値は表示されているだけなので、[ESC]キーで戻ると消えてしまいます。
保存したい場合、変数メモリーなどに登録する必要があります。
複利計算(CMPDモード)などでは、項目を選択すると、=が S に切り替る項目があります。 例えば、FVはその1つです。
必要な項目を設定してからFVで[SOLVE]キーを押すと、FVの結果が表示されます。
FVメモリーは最重要な金融計算メモリーの1つなので、モードを切替えても電源を切っても保存されます。
しかし、前述の一時記憶用の金融計算メモリーに計算結果が入る場合、モードを切替えたり、電源を切ると計算結果が消えてしまいます。
消えると困る場合、変数メモリーなどに保存するしかありません。
やっかいなのは、どのメモリーが保存されて、どのメモリーがモード切替で消えるのか画面表示で分からないのです。
どのメモリーが保存されるのか暗記しないといけないのです。
操作方法は比較的分かりやすいのですが、メモリー関連の問題が多くて使い易さはいまいちなのです。
このカーソルキーは使いやすいとは言えません。
4つのキーが一枚の板でつながっている上に直径約18mmと小さいので、押しやすいとは言えません。
それだけでなく、反応が明らかに鈍いのです。
CPUが高速とは言えないにも関わらず、画素数の多い画面を描画するので、それが負担になっているのかもしれません。
計算速度については後述します。
本機 FC-200V は4行表示による対話的操作が可能なので、HP 12c Platinum や BA II Plus と違って細かいキー操作まで説明しません。 計算例は HP 12c Platinum や BA II Plus と同じにしています。
計算例において、答えを出している箇所の背景を 薄い赤色 にしています。 負数の数値は支払い額を表しています。
(計算例)
500万円を年利5%の単利で借りる場合、2.5年後の経過利息を求める。
さらに2.5年で返済する場合の合計返済予定額を求める。
1年=360日基準で計算すること(金融の計算は1ヶ月=30日、1年=360日で行うことが多い)
SIとSFVは自動的にメモリーに保存されませんので、保存したいときは手動で変数メモリーなどに入れる必要があります。
(計算例)
3,000万円を年利5%の複利で借りたとする。毎月20万円返済する場合、返済期間は何ヶ月なのか。
また、借金の合計返済額はいくらになるか。
本機の説明書では、AMRTモードは「年賦償還計算」となっていますが、ここでは月賦償還計算をします。
ここは説明書がおかしいと思います。明らかに月賦償還計算ができるからです。それどころか3ヶ月毎や半年毎も可能です。
(計算例)
上の複利計算において、2年目終了後の残高を求める。
さらに2年目だけの支払合計(-200,000 × 12 = -2,400,000)において、元金分と利子分を求める。
複利計算で使用した金融計算メモリー(VARS)はそのままにして計算すること(I%, PV, PMT, P/Y, C/Y が償却計算で使用される)。
この操作方法だと結果は保存されません。
結果を保存したいときは、BAL, ΣIN, ΣPRが表示されている時に変数メモリーなどへ保存する必要があります。
投資評価計算の目的は、NPV(正味現在価値)と IRR(内部収益率)を求めることです。
NPV(正味現在価値)の定義は以下の通りです。
C
0
〜C
n
がキャッシュフローです。C
0
は投資なので、必ず負数になります。
r が投資で確保したい利率(期待収益率=割引率)です。例えば、5%のとき0.05になります。
この式は将来に得られる予定のキャッシュフローは現在から見て不確実で価値が低いという意味です。そのため、遠い将来のキャッシュフローほど分母の指数が大きくなります。将来のキャッシュフローの価値を
割引いている
のです。
NPVの値が正のときは利益が得られることになります。
IRR(内部収益率)の定義は NPV = 0 にしたときの r のことです。
内部収益率 r が大きい方が投資して利益が出る可能性が高くなります。
(計算例)
5,000万円の不動産を購入して、10%の利回りを確保したいとします。
キャッシュフローの動きは以下のように仮定します。年数1〜4は家賃などの利益です。最後に7,000万円でその不動産を売却します。
このときのNPV(正味現在価値)とIRR(内部収益率)を求めます。
年数 | キャッシュフロー |
---|---|
0 | -50,000,000 |
1 | 6,000,000 |
2 | 5,900,000 |
3 | 5,800,000 |
4 | 5,500,000 |
5 | 70,000,000 |
|
|
この操作方法だと結果は保存されません。
結果を保存したいときは、NPV, IRR が表示されている時に変数メモリーなどへ保存する必要があります。
COMPモード(四則演算・関数)とSTATモード(統計)が関数電卓的な機能を提供します。
ライン方式の入力が可能です。
そのおかげで変数メモリー(A,B,C,D,X,Y)や独立メモリー(M)を数式に混ぜることができます。
関数機能はそこそこの機能が用意されています。角度単位は DEGREE, RADIAN, GRAD から選択できます。
ただし、キーから直接入力できる関数は、丸め関数(Rnd)、三角関数、二乗、平方根、べき乗、指数関数、自然対数だけです。
逆三角関数、双曲線関数、逆双曲線関数、常用対数、階乗、絶対値、順列、組合せなどは[CTLG]キーのメニューから入力する必要があります。
下の写真が[CTLG]キーのメニューです。
直交座標・極座標変換もできます。
ただし、結果はX,Yメモリーに入れられるので、X,Yメモリーを上書きされてしまいます。
前述の金融計算の例のように数式に金融計算メモリーを混ぜることができます。
[SHIFT][CTLG](VARS)で金融計算メモリーを呼び出すメニューが開きます。
呼び出せる金融計算メモリーは n, I%, PV, PMT, FV, P/Y, C/Y, PM1, PM2, Dys の10種類だけです。
数式にメモリーを混ぜるとこができたり、座標変換ができたりと金融電卓の関数電卓的機能としては強力な部類に入るでしょう。
ただし、本当の関数電卓の機能には及びません。
計算履歴の仕様が少し奇妙に思えました。
計算履歴の容量は総計76バイトしかないのですが、入力可能な文字数は何故か99バイトあります。
そのため、76バイトに近い長さの数式を入力すると計算履歴が全部消えてしまいます。
ちなみにモード切替や電源OFFによっても計算履歴は消えてしまいます。
7種類の回帰分析が使えます。
HP 12c Platinum は線形回帰だけ、BA II Plus は回帰分析が4種類なので、本機の統計機能は金融電卓にしては豊富です。
それらの機種と同様に確率密度関数は使えません。
ただし、操作性に問題があります。
何故かSTATモードに切替える毎に統計計算の種類を選択しないといけません。以前のデータが残っていてもです。
下の写真は統計計算の種類を選択しているところです。
統計データが残っているときは、以前使った統計計算の種別を自動選択してくれてもいいと思うのですが。
このとき、
1変数統計から2変数統計に種類を切替えるとデータが消えます。その逆でも同様にデータが消えます。
統計計算の種類を選択するとSTATエディタが起動します。統計データを入力・編集する機能です。
この機能で行挿入を行うとき、[SHIFT][STAT](S-MENU)[3](Edit)[1](Ins)というややこしい操作が必要です。
そのくせ行削除は[DEL]キーを押すだけで簡単に行削除してしまいます。
本来は行削除の操作をややこしくするべきではないでしょうか。
STATエディタから抜けるには[AC]キーを押すという奇妙な操作が必要です。[ESC]キーでいいような気がするのですが。
STATエディタから抜けると、STAT演算画面が起動します。
STAT演算画面で統計データを元にした計算ができます。総和、平均、標準偏差、最大・最小、回帰分析などが可能です。
しかし、統計計算機能を呼び出すメニュー階層が深くて使いやすいとは言えないものです。
STATエディタは、CASHモードのD.Editorとメモリ領域を共有しています。
そのため、CASHモードのD.Editorを使用するとSTATエディタのデータが消えることに注意する必要があります。
以下の条件の償還計算の残高を求めて時間をストップウォッチで測定します。秒数は四捨五入します。
FC-200Vにおける設定(AMRTモード)
Set:End(期末払い)
PM1=1(開始支払い回数)
PM2=800(終了支払い回数)
n =0(入力不要)
I% =3(年利)
PV =100000000(元本)
PMT=-90000(1回分の支払額)
FV =0(入力不要)
P/Y=12(年間の支払い回数)
C/Y=12(年間の利息回数)
他機種での設定方法はここには書きませんが、1つだけ注意点を述べます。
HP 12c Platinum の場合、P/Y, C/Yに相当する機能がないので、3%÷12=0.25%を設定する必要があります(同機は年利を12で割って設定する機能があるのでそれを使うこともできる)。
機種名 | 計算時間 | 結果 |
---|---|---|
BA II Plus(2014年版) | 4秒 | 507,720,779.4 |
FC-200V | 19秒 | 5.0772078×10 8 |
HP 12c Platinum(2007年版) | 20秒 | 507,720,779.4 |
FC-200V は速いとはいえません。
FC-200V の有効桁数は表示上8桁ですが、変数メモリーに保存してからCOMPモードで呼出すと10桁あることが分かります。
2004年頃の技術で太陽電池で動作するのが前提だったので、あまり速度を上げられなかったのでしょうか。
CPU ML610901 を開発した
沖電気工業の説明
によりますと、CPUは8bit、クロック500kHzで3段パイプラインなので、パイプラインのないCPUの1.5MHz相当になります(実際には単純に3倍にならないが)。
それでも高速とは言えないでしょう。
今まで金融電卓の説明書には苦労させられました。
HP 12c Platinum の日本語説明書は、日本語が不自然な上に誤植も多く、英語版を併用しないと意味が分からないところがありました。
BA II Plus は日本語説明書がないので、英語版を読むしかないのですが、誤植が多くて苦労しました。
本機 FC-200V はちゃんとした日本語で書かれた説明書がダウンロードできます。
しかも誤植も少なくなっています。やっとまともな説明書に出会うことができました。
しかし、問題点がない訳ではありません。
略語の元になった英語が書かれていないことが多いのです。書かれていても一部だけです。
例えば、QBE という略語は「売上数量」と説明されているのですが、元になった英語が書かれていません。
元になった英語が分からないのに略語を暗記するのは非常に困難です。
そこで英語版説明書を読むと、QBE は 'Break-Even point sales Quantity'(損益分岐点の売上数量)の略語でした。
このように略語の説明をしていないところが多いのです。
特にタチが悪いと思った略語があります。
RDV
という略語なのですが、モードによって元の英語が変ります。
AMRTモードのときは、'Remaining Depreciable Value'(残存償却可能価額)です。
BONDモードのときは、'Redemption price per $100 of face Value'(額面価格$100あたりの償還価格)です。
これらの意味の違いは一応書かれているのですが、元の英語が書かれていないので、紛らわしくなっています。
それとあまり使われていない用語が登場します。
BEVNモードで EIT という略語が登場します。そして EIT に「利息/税引き前利益」という説明が書かれています。
しかし、EIT が何の略語なのか書かれていません。「利息/税引き前利益」もあまり使われていない用語のようです。
一般には
EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)「利払前・税引前利益」
と呼ばれているようです。
だから略語が EIT だったのです。日本国内でも EBIT(イービット)という言葉をそのまま使うようです。
これも英語版を読まないと気が付きませんでした。
折角、ちゃんとした日本語説明書があるのに略語の説明が手抜き過ぎます。
結局は英語版に頼らないとこの電卓は使いこなせそうにありません。
ちなみにハードケースの内側に略語の一覧があります。
全てを網羅している訳ではないようですが、かなりの略語の説明があります。
しかし、読みやすいとは言えず、英文説明書と略語の説明が多少異なっています。
ハードケースを外さないと使えないので、便利とは言い難いものです。
これは金融電卓としては、かなり問題だと思われます。
金融計算において正数は収入を意味し、負数は支払いを意味します。
そのため、符号は簡単に変えられるようにしないと使い難いのです。
本機 FC-200V ではカーソルを数値の先頭に移動させてから符号を変更しないといけません。
本機だけでなくライン方式入力の電卓はたいてい符号反転機能が付いていません。
多項式が入力できるためどの数値を符号反転するのか指定し難いからでしょう。
しかし、金融計算関連モードにおいて、各項目の符号反転は技術的にできるはずです。
負号キー [(-)] に加えて、符号反転キー [+/-] を搭載する場所がなかったのでしょうか。
ゴム足がありません。その代わり、本体背面にプラスチックの突起が4つあります。
しかし、プラスチックの突起では机の状態によっては安定して置けないこともあるでしょう。
HP 12c シリーズや BA II Plus だと各キャッシュフローデータを任意の回数だけ繰り返す機能があります。
キャッシュフローの数値が連続して同じ値のときは入力を省略でき、メモリーも節約できます。
しかし、本機 FC-200V にはこの機能が何故かありません。
全体的に見ると、本機の方がそれらの機種よりも多機能ですが、何故かこの機能だけは欠けています。
工場出荷時の設定だと数値を3桁毎に区切らない設定になっています。
設定を変更して数値を3桁毎に区切ることは可能ですが、数値を区切るカンマが1文字分の幅を消費するので、表示できる桁数が減ってしまいます。
そのため、工場出荷時の設定だと数値を3桁毎に区切らないようにしています。
金融電卓としてはあまり良いことではないでしょう。
こういうところは、7セグメント液晶の方が有利です。7セグメントの液晶の場合、カンマを表示しても表示の幅を消費することはありません。
4行表示による対話的な操作性が本機 FC-200V の魅力でしょう。
しかし、押し難くて反応の良くないカーソルキーが操作性の足を引っ張っています。
計算速度も今となっては遅い部類でしょう。
さらに繁雑なメモリー構成のせいで使いやすいとは言えないものになっています。
特にモード切替をしただけで消えてしまうメモリーが多いのは明らかに本機の欠点であり、日本の関数電卓を彷彿とさせます。
キャッシュフローデータと統計データが同じ記憶領域を共用しているのも本機の使い難い点です。
表示されるだけでメモリーに格納されない計算結果が多いのも問題です。その結果を残したいときは、手動で変数メモリーなどに入れるしかないのです。
1981年に登場した初代 HP 12c でも記憶領域の共用の問題はありますが、勝手にデータが消えることはありません。
1991年に登場した初代 BA II Plus は記憶領域の共用の問題がなく、勝手にデータが消えることはありません。
それなのに2004年に登場した本機 FC-200V は未だに記憶領域の共用の問題を抱えており、一部のデータが勝手に消えます。
日本の関数電卓を改造して作った金融電卓という感じなのです。
日本の関数電卓だとモード切替や電源OFFで一部のデータが消えてしまうのは当然ですが、その欠点をそのまま引継いだ感じです。
実際に本機と同一筐体の
fx-115ES
という関数電卓があります(後継機の
fx-115ES PLUS
は筐体が異なる)。
これでは HP 12c シリーズや BA II Plus より売れないのも当然でしょう。
HP 12c シリーズは本機 FC-200V よりも操作難易度は高いのですが、伝統があります。それにメニュー操作がないので、操作を完全に習得すると素早く操作できます。
BA II Plus は200種類以上の変数を搭載しており、記憶領域の共用の問題は完全にありません。しかもキー操作の反応が良くてサクサクと操作できます。
筆者は本機 FC-200V を $23.52という低価格で買えたのですが、同時期に BA II Plus が約$30で売られていたことを考えるとその程度の価値しかないような気がします。
本機の日本版は約9,000円で売られていますが、ボッタクリとしか言いようがありません(2018年2月現在)。
本機 FC-200V は4行表示や太陽電池駆動や機能数のような見た目的に分かりやすいところだけに力を入れていて、メモリーやカーソルキーの反応を含む本質的な部分がおざなりになっている感じです。
結局、誰に勧めればいいのかよく分からない金融電卓になってしまっています。
本格的な金融電卓の中で唯一まともな日本語説明書があるところが本機最大の利点かもしれません。
ただし、その日本語説明書も略語の説明が不足しているという問題を抱えており、略語の元になった英語は英語版説明書やハードケースで調べる必要があります。